最近、仕事でも個人開発でもAIを使う機会がかなり増えてきました。
文章の作成や調査、アイデア出しだけでなく、仕様整理、プログラミング、資料作成など、以前であれば自分で手を動かしていた作業の一部をAIに任せることも珍しくなくなっています。
そんな中で気になっていたのが、「ChatGPTに質問する」ことと「AI Agentに仕事を任せる」ことは何が違うのかという点です。
今回、そのあたりを整理するためにOpenAI Academyの「Agents and Workflows」を受講しました。
OpenAI Academyでは、AIの基礎から実務での活用、AgentやWorkflowの設計まで、さまざまなコースが公開されています。「Agents and Workflows」はその中でも、ある程度AIを使い慣れた人が、さらに構造化された仕事をAgentに任せるためのコースという位置づけです。
受講して特に印象に残ったのは、
AIにどこまで仕事を任せるかではなく、AIに仕事を任せられる状態をどう設計するか
という考え方でした。
PromptingからDirectingへ
普段ChatGPTを使うときは、
「この文章を要約して」
「このエラーの原因を調べて」
「このメールへの返信を考えて」
といった形で指示することが多いと思います。
これは基本的には**Prompting(プロンプティング)**です。
一方、Agentを使った仕事では、単に回答を求めるだけではなく、Agentに「仕事」を与えます。
例えば、
「今週のプロジェクト状況をまとめて」
だけではなく、
「今週のプロジェクト状況について、議事録・タスクリスト・課題一覧を確認し、進捗、ブロッカー、次のアクション、担当者、未解決事項に分けた週次報告を作成してください。ただし、担当者や日付が不明な場合は推測せず、不明であることを明記してください」
というような形です。
この違いは思っていた以上に重要でした。
Agentに仕事を任せる場合には、少なくとも次の5つを考えます。
Goal(目的)
何を達成したいのか。
Context(コンテキスト)
Agentは何を知っておく必要があるのか。どの資料を使うのか。
Constraints(制約)
何をしてはいけないのか。どこまでAgentに任せるのか。
Output(成果物)
最終的に何を作ってほしいのか。
Review Checks(レビュー項目)
人間は完成した成果物の何を確認するのか。
こうして見ると、これは「上手なプロンプトを書く」というより、仕事の依頼方法そのものを設計することに近いと感じます。
「AIに任せる」と「AIに判断させる」は違う
今回のコースでもう一つ印象的だったのが、不明な情報をAIに勝手に補わせないという考え方です。
例えば顧客の引き継ぎ資料をAgentに作らせるとします。
資料に情報が足りなかった場合、
「過去の似た案件を参考に不足している情報を埋めてください」
と指示すると、一見便利そうです。
しかし、引き継ぎ資料として考えるとかなり危険です。
そこで、
- 確認済みの情報
- 未解決の質問
- リスク
- 情報源
を分けて出力させる。
分からないものは「分からない」としたまま、人間に戻すわけです。
これは実際のプロジェクト管理でもかなり重要だと思います。
AIは非常に自然な文章を作れるため、「確認された事実」と「AIが補完したもっともらしい情報」の境界が分からなくなることの方が怖いからです。
Agentの能力が高くなるほど、「何をできるか」だけではなく、「何をさせないか」も設計する必要があると感じました。
Chat、Work、Skill、Pluginをどう使い分けるか
今回のコースでは、すべてをAgent化すればいいわけではなく、仕事に応じて機能を使い分けるという考え方も扱われていました。
自分なりに整理すると、次のようになります。
| 手段 | 向いている仕事 |
|---|---|
| Chat | 質問、相談、アイデア出し、文章の修正 |
| Work | 複数の情報を使って成果物を作る |
| Skill | 確立したワークフローを繰り返し利用する |
| Plugin | 外部システムの承認された情報を利用する |
| Scheduled Task | 安定した処理を定期的に実行する |
| Workspace Agent | 組織のルールや権限を含めて共通のAgentとして運用する |
特に面白かったのが、いきなりSkill化・自動化しないという考え方です。
例えば毎週月曜日にプロジェクトレポートを作りたいからといって、最初からScheduled Taskにするわけではありません。
まず手動で実行する。
出力を確認する。
足りない指示を追加する。
参照する情報源を決める。
人間が確認するポイントを決める。
何度か実行してワークフローが安定したら、Skillとして再利用できる形にする。
さらに実行タイミングまで安定して初めてScheduled Taskを検討する。
つまり、
手動実行 → 改善 → 標準化 → 再利用 → 自動化
という順番です。
これはソフトウェア開発の自動化にも近い考え方で、個人的にはかなり納得感がありました。
「Human in the Loop」は最後に確認するだけではない
AI Agentという言葉から、
「AIが全部作業して、最後に人間が確認する」
というイメージを持っていました。
しかし今回学んだ内容では、人間の役割はもっと広いものでした。
人間が、
どの情報を使わせるか決める。
どこまでAgentに判断させるか決める。
何を成果物とするか決める。
不明な場合にどうするか決める。
最終的に利用してよいか確認する。
つまりHuman in the Loopは単なる「最終チェック担当」ではなく、ワークフローそのものの設計者なのだと思います。
実際の仕事に当てはめてみる
今回の内容を自分の仕事に当てはめて考えると、Agentと相性が良さそうな業務はいくつもあります。
例えばプロジェクト管理なら、
- 議事録から決定事項を整理する
- タスクの進捗をまとめる
- 未解決事項を抽出する
- 週次報告を作る
- 要件や仕様の抜けを整理する
といった仕事があります。
これまでもChatGPTで個別に行うことはできました。
ただ、毎回、
「この議事録をまとめて」
と依頼するのではなく、
入力する情報 → 処理方法 → 出力形式 → 制約 → 人間による確認
まで定義すれば、それ自体を一つの「Workflow」として扱えるようになります。
例えば、
議事録・タスク管理表・仕様書
↓
Agentが情報を整理
↓
決定事項・進捗・課題・次のアクションを抽出
↓
不明な担当者や期限は推測せず明示
↓
PMがレビュー
↓
週次報告として共有
という流れです。
こう考えると、Agent導入で重要なのは「AIを使うこと」ではありません。
現在人間が行っている仕事を、再現可能なプロセスとして説明できるかどうかが先に問われます。
これはAI導入とは関係なく、業務改善としても意味のある作業だと思います。
Agent時代には「仕事を定義する能力」が重要になる
今回のコースを受講して、一番考えさせられたのはここでした。
AIの性能が上がれば上がるほど、人間が細かい作業をする必要は減っていくと思います。
その一方で、
「何を作るのか」
「どの情報を信用するのか」
「どこまでAIに任せるのか」
「何をもって完成とするのか」
「どこを人間が確認するのか」
を決める仕事は、むしろ重要になります。
エンジニアリングで言えば、実装そのものよりも要件定義や設計に近い能力です。
Agentを使いこなすというと、どうしても「良いプロンプトを書く技術」に目が向きがちです。
しかし、今回のコースを通して感じたのは、
Agent活用とは、プロンプトを書く技術というより、仕事を構造化して渡す技術なのではないか
ということでした。
OpenAI AcademyのCredentialも取得
今回「Agents and Workflows」のLearning Pathを最後まで修了し、OpenAI AcademyのデジタルCredentialも取得しました。
コース自体は約90分のIntermediateレベルで、Agentを使った構造化されたワークフローをどう設計・レビュー・改善していくかを学ぶ内容です。OpenAI Academyの公式資料でも、「Agents and Workflows」は、より構造化されたAgentの仕事を指示する段階のコースとして紹介されています。
資格というよりは学習コースの修了Credentialですが、今回学んだ考え方は、今後AIを業務に組み込んでいく上でかなり参考になりました。
今後は実際の仕事の中から、
「繰り返し発生する」「入力情報がある程度決まっている」「成果物を人間がレビューできる」
という業務を探して、Agent Workflowとして組み立ててみたいと思います。
単発の「ChatGPT活用」から一歩進んで、AIを仕事のプロセスそのものにどう組み込むか。
ここから実際に試していきたいと思います。
